赤ちゃんが泣くこと自体は、異常ではなくむしろ自然なことです。
しかし、もしかすると何か病気が隠れているのではないか、という心配もあるでしょう。
そこで今回は、赤ちゃんがなかなか泣き止まないときに考えられる病気のうち、すぐに病院に行った方がいい場合をご紹介します。
【目次】
1.嘔吐や血便が見られる腸重積の場合

赤ちゃんが泣く原因として、腸重積となっている恐れもあります。
(1)腸重積とは
腸重積とは、生後2ヶ月頃から幼児期までの間に起こりやすい病気で、病名の通りおなかの中で腸が内側に入り込んで重なってしまうものです。
腸が重なることでその部分に血液がうまく届かず、次第に重なった部位以外の部分にも血液が届かなくなります。
腸に十分な血液が届かないと、その部分から壊死しはじめて徐々に全体に広がってしまいます。
壊死した腸はもろくなるため、破れてしまって消化物が腸の外に出て、おなかの中にさらに炎症を起こし腹膜炎を併発する恐れがあります。
(2)腸重積のときの泣き方
腸重積になっても、常に痛みがあるわけではありません。
腸は消化物を送るために定期的に蠕動運動と言われる動きをします。その動きは5~30分おきくらいに起こるため、そのタイミングで痛みが生じます。
赤ちゃんは痛みを感じたときに泣きますが、蠕動運動がおさまって痛みがなくなるとまた泣き止むという間欠的な泣き方をするのが特徴です。
(3)腸重積の主な症状
腹痛 | 次第に間欠的な強い腹痛があらわれる 不機嫌になったり間欠的に泣いたりする |
嘔吐 | 口から入ったものが腸重積を起こした部位に溜まっていくため、食欲がなく嘔吐するようになる |
顔面蒼白 | 痛みや嘔吐による脱水が影響し、顔色が悪くなる |
血便 | 腸重積の特徴でもある、イチゴジャムのような血便が出ることがある |
その他 | ・便が出ない ・おなかに硬いものが触れる など |
(4)最悪の場合は命の危険もある
腸重積の症状が見られる場合、早期に発見できればほとんどの赤ちゃんは治療によって重なった部分を整復することができます。
しかし、それでも整復されない場合は手術をおこなう必要があります。また腹膜炎を併発してしまうと、最悪の場合、命の危険もあります。
そのため、早期発見ができるよう、休日や夜間の場合は内視鏡の設備が整っており、最悪の場合手術の対応もできる救急病院にいち早く受診するようにしましょう。
2.どの年代でもおこる細菌性腸炎の場合

赤ちゃんだけではなくどの年代にもおこりうる細菌性腸炎の恐れもあります。以下で詳しくご説明します。
(1)細菌性腸炎とは
細菌性腸炎の原因菌はさまざまですが、その中でも特に注意が必要なのは腸管出血性大腸菌です。
時々ニュースなどでも取り上げられるO-157やO-111は、重症化しやすいため特に注意が必要です。重症化すると貧血、腎不全、脳症などを併発する恐れがあります。
これらの菌に感染すると、菌がつくり出す毒素によって腸に炎症がおき、さまざまな症状をもたらします。
(2)細菌性腸炎に感染しているときの泣き方
比較的弱い菌の場合は痛みも弱いですが、O-157やO-111などの場合、腸の炎症が進むと非常に激しい腹痛がおこります。
この腹痛は大人でも耐えられないほどの痛みであり、
- 最初のうちは痛みのために泣き続ける
- さらに悪化すると泣く元気がなく、意識がはっきりしないほどぐったりする
といったような泣き方をします。
(3)腸管出血性大腸菌感染のときの主な症状
頻回な水様便 | 赤ちゃんの便はもともと水分が多いが、さらに水っぽくなり回数が増える |
激しい腹痛 | 細菌がつくる毒素によって腸が炎症をおこすため非常に激しい腹痛が起こる |
血便、吐血 | 腸のどこかで出血がおこると、血便や吐血が見られる 特に血便は、最初は量が少なくても次第に増えていくことがある |
その他 | 細菌により熱が出る 症状が悪化して出血が多くなると血液の循環不良を起こす |
赤ちゃんが腸管出血性大腸菌に感染していると言うことは、もしかすると他の家族にも同じような症状があらわれている可能性があります。
(4)水様便が続くだけでも脱水を起こす可能性がある
腸管出血性大腸菌は、重症化すると命の危険が高い感染症です。感染を疑う場合は迷わず救急の病院に相談するようにしましょう。
赤ちゃんの場合、水様便が続くだけでも脱水症状をおこす恐れがあります。
そのため、便の異常が頻回に見られる場合は、その便を袋などに入れて他への感染を防ぎながら病院に持って行きましょう。
3.内臓が飛び出るかんとんヘルニアの場合

赤ちゃん泣いている場合、「かんとんヘルニア」が疑われる可能性があります。以下で詳しくご説明します。
(1)かんとんヘルニアとは
脱腸と言う言葉を聞いたことがあるでしょうが、脱腸は鼠径ヘルニアと言われるもので太ももの付け根部分に腸が飛び出てしまうものです。
鼠径ヘルニアは痛みがなくふくらみを指で押すと元に戻ったり、成長と共に自然に治ったりする場合も多いですが、腹膜から飛び出た部分が締め付けられ、変色してきたり痛みが出てきりする状態をかんとんヘルニアといいます。
そもそも鼠径ヘルニアはなぜ起こるの?
赤ちゃんはママのおなかの中にいるころ、おなかの腹膜と言われる部分と足の付け根の部分が交通しています。
生まれるときには腹膜が塞がり、内臓が飛び出ることはありません。
しかし、腹膜が閉じない赤ちゃんもおり、穴から腸が飛び出てしまうことがあるのです。それが鼠径ヘルニアとなります。
(2)かんとんヘルニアのときの泣き方
かんとんヘルニアを起こす前には、鼠径ヘルニアがあることがほとんどです。
鼠径ヘルニアは触れても痛がりませんが、かんとんヘルニアになってしまうと痛みが出るため、
- その部分を触れるだけでも泣くようになる
- 腸の部分の血流が減ってしまうと痛みが強くなるため泣き続けることもある
というような泣き方がみられます。
(3)かんとんヘルニアの主な症状
鼠径ヘルニアの部位の変色 | 鼠径ヘルニアが腹膜内に戻れないほど締め付けられてしまうため血流が悪くなる 他の部分と比べて色が暗赤色になる |
腹痛 | 腸が締め付けられること、血流が悪くなることで強い痛みを伴う |
嘔吐 | 締め付けられた腸の部分以降に消化物が流れず溜まってしまうため嘔吐することがある |
その他 | 壊死してしまうと、外からおなかを触れると硬く感じることがある |
(4)元々鼠径ヘルニアがある赤ちゃんは要注意!
元々鼠径ヘルニアがある赤ちゃんは、かんとんヘルニアの兆候がないか注意して観察しておくようにします。
時間がたって血流が悪くなると、最悪の場合腸が壊死してしまいます。
壊死した部分は徐々に広がり、腹膜炎を併発するなど全身にも悪い影響があります。
痛みがない間は定期的に受診する程度で大丈夫ですが、腸が戻らなくなり、痛みのために泣いているようであれば、すぐに最悪の場合手術もできるような病院を受診する必要があります。
4.男の子におこる精巣捻転の場合

男の子限定ですが、精巣捻転が原因で泣いている可能性もあります。以下で詳しくご説明します。
(1)精巣捻転とは
精巣は精索と呼ばれる軸につながっています。精索には精巣に血液を運ぶ血管があります。
赤ちゃんは精巣がしっかりと固定されていないこともあり、精索が何らかの理由でねじれてしまうことがあります。
それが原因となり、精巣に十分な血液が届かなくなる状態を精巣捻転と言います。
(2)精巣捻転のときの泣き方
精巣捻転は徐々になるものではなく突然起こります。
そして睾丸の部分が腫れて強い痛みを生じますが、赤ちゃんの場合は痛みがない場合もあります。
痛みがあらわれる場合は、突然痛むため急に泣きはじめて泣き続けます。

看護師ポイント
泣いていると思っておむつを替えようとすると、下腹部や睾丸に触れるため特に激しく泣く場合があります。
(3)精巣捻転の主な症状
睾丸の腫れ | 左右の睾丸の大きさに差があったり、赤紫色に変色したりすることがある |
睾丸や下腹部の痛み | 精巣への血液の流れが悪くなる 睾丸が腫れてくると、触れなくても痛むためにさらに泣くこともある |
その他 | 赤ちゃんの精巣捻転の場合、痛みなどの症状が現れないことがある 気付かないうちに壊死してしまい、それが原因で発熱などの症状を起こすことがある |
(4)睾丸に異常が見られたらすぐ病院へ
赤ちゃんの精巣捻転は判断が難しい場合があります。しかし、赤ちゃんが泣いていたり、睾丸に異常が見られたりする場合は早急に病院に行きましょう。
もし精巣捻転の場合、症状が出てから遅くても24時間以内に捻転部を治すことで、精巣を温存できる可能性が高まります。
また、摘出は免れたとしてもダメージを受けた部分は正常に機能しない場合があります。
症状が出てからは一刻も早い対応が重要になるため、精巣捻転を疑う場合は休日や夜間であっても迷わずに手術が可能な救急病院に連絡し受診するようにしましょう。
5.関節の脱臼や骨折の場合

赤ちゃんの身体はまさに成長途中にあります。そのため、関節は柔らかく、動く範囲を少し超えてしまうだけでも簡単に脱臼してしまうことがあります。
また、力加減ができずぶつけると痛いということがわからないため、ベッドの柵などに思い切りぶつけて骨折してしまうこともあります。
(1)脱臼や骨折のときの泣き方
赤ちゃんの場合、脱臼や骨折をしただけでは泣かないこともあります。しかし、動かすことで痛みを生じて大泣きすることがあります。
そのため、
- 抱き上げる
- 関節を動かす
- 体勢を変える
などのタイミングで急に泣き出すこともあるでしょう。
また、脱臼や骨折をしている部位に触れると痛みが増して余計に泣くことがあります。
(2)脱臼や骨折のときに見られる主な症状
左右の手足の長さが違う | 左右を比較して長さが違う場合は、痛がる側が脱臼している可能性がある |
関節部がくぼんでいる | 関節に骨がおさまっていない場合、その部位がくぼんで見えることがある |
変形している | 骨折しているときには身体を全体的に見たときに変形していることがある (赤ちゃんはふくよかなため見た目にはわからないことも) |
熱を持っている | 骨折している部位は炎症をおこして熱を持ち、触れると熱く感じることがある |
(3)整形疾患を見ることができる救急病院へ
赤ちゃんが泣いているときは、ママに抱っこしてもらうと落ち着いて泣き止むことがあります。
しかし、脱臼や骨折が原因で泣いている場合は、抱き上げることで余計に痛みを増強させてしまいどうすることもできません。
また骨折が原因で他の組織を傷つけてしまう恐れもあります。そのため、脱臼や骨折を疑う場合は整形疾患を見ることができる救急病院に行くようにしましょう。
6.呼吸がしづらい喘息や気管支炎の場合

喘息や気管支炎により、赤ちゃんが泣いている可能性もあります。以下で詳しくご説明します。
(1)喘息や気管支炎とは
喘息や気管支炎は細菌に感染した場合や、何らかのアレルギー物質に接触したことにより呼吸困難をおこす場合があります。
空気の通り道である気管支が狭くなることで、空気を吐き出せず溜まってしまいます。
その結果、十分な酸素を取り込むことができず身体の中の酸素が不足してしまいます。
(2)喘息や気管支炎のときの泣き方
呼吸が苦しいことを言葉で訴えられないため、泣いて苦しさを訴えます。
- 身体を起こしていると呼吸がしやすくなるため泣き止むことがある
(気管支が狭いままでは呼吸の苦しさは改善されないため次第に元気がなくなりぐったりしていく) - 泣き声と共に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音が聞こえることがある
喘息や気管支炎の場合、以上のような泣き方がみられます。
(3)喘息や気管支炎の主な症状
咳・ 「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音 | 空気が外に出るときに、気管支が狭いため空気が刺激となって咳がでることがある 狭い気管支は笛のような役割をして、笛を吹いたような音がすることがある |
身体を起こしていると呼吸が楽 | 身体を起こすと呼吸筋でもある横隔膜が下がる 空気を取り込みやすくなり呼吸が楽になる |
爪や唇が紫色 | 身体の隅々まで十分な酸素を送ることができなくなり、末端である指先や唇の色が青紫色に見えることがある |
顔面蒼白 | 酸素が不足することで皮膚の血色も悪くなる |
その他 | 呼吸困難が酷くなり、身体中の酸素が不足してしまうと脳への酸素も不足してしまう 意識を失うなど、最悪の場合命の危険もある |
(4)呼吸困難がなければ様子を見て大丈夫
喘息や気管支炎など、身体の調子が悪ければ赤ちゃんは泣いて苦痛を訴えるでしょう。
既に治療をおこなっている場合や、呼吸困難の症状が見られていない場合は様子を見てもよいでしょう。
切迫している場合は救急車を要請することも考えましょう。
まとめ
今回は、赤ちゃんが泣き止まない場合に考えられる病気の中から、緊急に受診する必要が高いものの一部をご紹介しました。
他にも珍しい症状や通常軽症の病気が重症化してしまった状態など、赤ちゃんが成長していく過程で誰でも発症する可能性のある病気はいくつもあります。
赤ちゃんをすぐに病院に連れて行ったほうがいい目安は、「いつもの泣き方と違う」というママの気付きが何よりも重要です。
受診して何もなければ安心できるため、「いつもと違う」というときには迷わずに病院に相談してみましょう。
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