「高血圧」や「蛋白尿」の症状が出る妊娠高血圧症候群は、妊婦さんにとって怖い病気のひとつです。
重症化してしまうと、、母子共に命の危険にさらされてしまいます。
ここでは、妊娠高血圧症候群の症状や赤ちゃんにもたらす影響、予防する方法についてご紹介します。
1.妊娠高血圧症候群とは

妊娠20週から、お産を終えた後12週までの間に「高血圧」を発症した場合を妊娠高血圧症候群と言います。
妊娠高血圧症候群はさらに症状別に分けられ、
- 「高血圧」のみの場合を「妊娠高血圧症」
- 「高血圧」「蛋白尿」がある場合を「妊娠高血圧腎症」
以上のように呼びます。
高血圧と蛋白尿が主な症状
上記からも分かるように妊娠高血圧症候群の主な症状は「高血圧」「蛋白尿」です。
妊婦健診では毎回、血圧測定と尿検査を受けます。母子手帳にも記載欄があり、妊娠高血圧症候群の兆候を見つけるためにも大切なことなのです。
高血圧とはどのくらいの値?
では、高血圧とはどのくらいの値を言うのでしょうか。
収縮期血圧(上の値)が140mmg以上、拡張期血圧(下の値)が90mmg以上で「高血圧」だと考えます。
さらに、収縮期血圧(上の値)160mmg以上、拡張期血圧(下の値)110mmg以上まで上がると「重症化している」と判断します。
蛋白尿の値の判断基準について
蛋白尿の値は、母子手帳を見ると分かるように「−・±・+」で表します。「−」に印があれば、何の心配もいりません。
「±」の場合も、尿に蛋白が含まれている可能性があるという程度で、一度印がついた位では問題ないと考えます。
問題となるのは「+」や「++」の印がある場合です。この場合、尿に蛋白が含まれているという、心配しなければいけない状況です。
早発型と遅発型に分けられる
妊娠高血圧症候群は、妊娠20週〜32週未満で発症した場合を「早発型」、妊娠32週以降に発症した場合を「遅発型」と分けられます。
妊娠高血圧症候群と聞いたとき「お腹が目立ち始める、妊娠後期から注意しなければいけない」と考える方が多いでしょうが、早い段階から発症することもあるのです。
早発型の場合、重症化するリスクが高い
妊娠高血圧症候群が「早発型」と呼ばれる早い段階で発症した場合、重症化するリスクが高くなることが分かっています。
つまり、胎盤が完成する安定期に入った頃から注意しておかなければいけない病気でもあるのです。
高血圧は「胎盤の血管の異常」が原因だと言われている
妊娠高血圧症候群の本当の原因は未だにはっきりとは分かっていませんが、有力だとされる原因が分かってきました。
それは「胎盤が作られるときに、胎盤の血管に異常があった」ということです。
異常を持った血管は妊娠が進むにつれ、お母さんの全身の血管にまで影響を及ぼすと考えられます。

助産師ポイント
胎盤ができるのは、妊娠初期から妊娠15週ごろまでの間です。
そんな早い段階での出来事が、妊娠中の「高血圧」と深く関わっているということです。
蛋白尿が出るのは腎機能が低下しているため
妊娠高血圧症候群により蛋白尿が出るのは、腎機能が低下していることが原因です。
腎臓には、身体にたまった老廃物や余分な水分を外へ出し、血液を綺麗にして、身体に戻す働きがあります。
通常「蛋白質」は、血液とともに身体に戻ります。しかし、睡眠不足や運動不足、疲労の蓄積などにより、腎臓の働きが低下してしまうと「蛋白質」は尿として排泄されてしまいます。
2.重症化した場合はどうなるの?赤ちゃんへの影響は?

妊娠高血圧症候群の重症化は、母子ともに命に関わる、リスクの高い状態です。
この病気は、胎盤が十分な役割を果たせず、赤ちゃんに、酸素や栄養が行き届きにくくなります。最悪の場合、赤ちゃんが亡くなってしまう危険もあるのです。
また、重症化した妊娠高血圧症候群の治療の選択肢としては、
- 入院治療によりこのまま「妊娠を継続する」
- 帝王切開や誘発分娩により「妊娠を終了する」
上記のどちらかの選択になります。
(1)入院治療
重症化した妊娠高血圧症候群では、日常生活を普通に過ごすことさえも身体への負担となってしまいます。
高くなりすぎた血圧は、何もしなければ上がり続けます。治療するには、入院して安静にする必要があります。
状況によっては、ベッド上で排泄したり尿の管を入れたりすることもあります。
降圧剤を使用し血圧をコントロールする
重症化した妊娠高血圧症候群の治療には、降圧剤を使った血圧のコントロールも必要です。
急激な血圧の低下は赤ちゃんがしんどくなることもあるため、入院して慎重に管理していきます。
(2)妊娠の終了
重症化した妊娠高血圧症候群の根本的な治療法としては、妊娠の終了しかありません。
妊娠32週未満の場合には赤ちゃんが十分に成熟しておらず、早産で出産するリスクとお母さんの体調を天秤にかけ、慎重な判断が必要になります。
妊娠の終了を選択する場合とは
重症化した妊娠高血圧症候群により妊娠の終了を選択する場合とは、血圧の上昇とともに
- 頭痛がする
- 目の前がチカチカする
- 吐き気がする
- 胸の間あたりが痛い
などの症状がひどくなってきた場合は、妊娠32週未満であっても、妊娠の終了を選択します。
ひどくなると、赤ちゃんの急激な状態悪化だけではなく、お母さんが子癇発作(痙攣や意識障害)を起こすなど命をおとす危険もでてくるからです。
3.妊娠高血圧症候群を予防するには

母子ともにリスクの高い妊娠高血圧症候群を予防するために、お母さんはなにをすればよいのでしょうか。以下で詳しくご説明します。
(1)バランスの良い食事を摂る
妊娠高血圧症候群を予防するうえで何より大切なのは、バランスのとれた食事です。
極端な食事制限や過度な食べ過ぎは、どちらもお勧めできません。食事としては、
- 塩分を控える(カップラーメンやスナック菓子は食べない)
- 糖分の高い炭酸飲料は飲まない
- 必要なら間食も仕方がないが、今食べる量以上の物を食卓に出さない
- 食事のはじめに野菜を食べ、次に肉や魚などのタンパク質、最後に炭水化物を食べる
以上のことに気をつけてください。大切なのは偏った食事ではなく、バランスの良い食事です。
(2)適度に運動する

先に紹介したように、運動不足は腎機能の低下のリスクとなることが分かっています。
そのため、妊娠高血圧症候群を予防するために適度に運動することを心がけましょう。
無理のない程度で続けることが大切
妊娠した後に新しく何か運動をはじめようと頑張る必要はありません。妊娠前から続けている運動がある方は、それを無理のない範囲で続けるだけで十分です。
中には、妊娠前は全く運動習慣がなかったという方もいるはずです。そんな方は、マタニティヨガに興味があれば、一度体験してみるのも良いかもしれません。また、ゆっくり散歩する、入浴後ストレッチするなどもお勧めです。
(3)十分に睡眠をとる
妊娠高血圧症候群を予防するうえで大切なことは、十分な睡眠時間を確保することです。まずは、毎日しっかり7時間以上寝て下さい。
適度な疲労は問題にはなりませんが、疲労のため込みすぎは良くありません。
妊娠前と同じ仕事、妊娠前と同じ家事、妊娠前と同じ日常を過ごせば、間違いなく疲れてしまいます。

助産師ポイント
今、あなたのお腹には赤ちゃんがいるのです。お母さんが無理すれば、赤ちゃんにも良くない影響が間違いなくでてきます。
まとめ
これまで紹介したように、妊婦高血圧症候群は重症化すると大変怖い病気です。治療は、症状が出はじめてからの対処になります。軽い場合には入院せず、内服治療などで様子をみることもあります。
大切なことは、いつもと違う兆候を見逃さず、おかしいなと感じることです。
元気な赤ちゃんに出会うために、定期健診をきちんと受けることはもちろん、自分の血圧の値や尿検査の結果などにも関心を持って下さい。
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