妊娠の経過途中で多くの人が経験するのが「つわり」です。
多くの人がなるからといって、我慢してしまってはいませんか。
確かに妊娠初期の一般的な「つわり」は生理的に起こる症状であるため病気ではありませんが、「みんなが経験するものだから」とひどいつわり症状をずっと我慢をしていると、それが実は病院で治療が必要な病気になってしまっているかもしれません。
そこで今回は、一般的な症状の「つわり」と病院で治療すべき重症化したつわり「妊娠悪阻」の違い、病院へ行くタイミングやその際何科を受診するべきか、また治療法などについて詳しくご紹介します。
1.ひどい「つわり」は妊娠悪阻の可能性がある

つわりは治療の必要ない通常のつわりと、病院で治療が必要で重症化してしまった妊娠悪阻とに分かれます。
この2つの違いと、受診するにはどうしたらよいかをご紹介します。
(1)通常のつわりの症状とは?
通常のつわりは妊娠初期の妊娠4~6週目(妊娠2ヶ月)頃から始まって、妊娠12~16週(妊娠4ヶ月)の妊娠中期に入る頃にはその症状が落ち着くことが多いです。
そのつわりの症状は、吐き気や嘔吐、眠気、唾液過多、頭重感や頭痛、倦怠感などがあげられます。
他にも食べ物の好みが変わり酸っぱいものが無性に食べたくなったり、同じものばかり食べたりしてしまいます。
このように様々な症状が出てきますが、その場合は食べられるものを食べたり、つわりを軽くするために気分転換したり、無理せずに乗り切る方法を考えます。
(2)「妊娠悪阻」の症状とは?
上記のつわりの症状が強く出てしまい、食べ物はおろか水分もなかなか摂れなくなってしまうこともあります。
食べられないのに嘔吐ばかりするというとても重症な人もいます。
このようにお腹の赤ちゃんの成長にまで影響を及ぼしてしまうほど栄養と水分の摂取ができなくなってしまった状態を「妊娠悪阻」と言います。
(3)通常のつわりと妊娠悪阻を見分けるポイントは?
通常のつわりと妊娠悪阻を分けるポイントは「ケトン体」です。
身体が栄養不足になってしまうと、人間は生命を維持するために自身の脂肪を燃焼してエネルギーに変えようとしますが、その際に尿中に多く分泌されるのがケトン体です。
このケトン体の分泌が多い(尿検査で陽性)と、身体が脱水~飢餓状態になっていると判断され、治療の対象となるのです。

看護師ポイント
つわりは通常のものであってもひどい人にとっては辛いものです。
自分自身で通常のつわりなのか妊娠悪阻なのかを判断するのは難しいため、我慢せずに一度病院を受診し相談してみましょう。
2.ひどい「つわり」は何科に受診すればいいの?

では実際に何科を受診すればよいでしょうか。
つわりなのでもちろん妊婦検診を受けているかかりつけの産婦人科を受診するのが一番ですが、そのかかりつけの産婦人科が自宅から必ずしも近いとは限りません。
つわりがひどくて動くのも辛い時に、30分でも移動にかかってしまうことはとてもきついことです。
そんな時は以下の方法もあるため参考にしてください。
(1)まず、かかりつけの産婦人科へ電話する
かかりつけの産婦人科が自宅から遠い場合、つわりがひどくて受診したいこと、しかし遠くて受診が困難であるため他院で臨時の治療を受けても良いか確認をしましょう。
その際には、食事や水分摂取の状況、嘔吐の頻度、尿回数、体重の変化を伝えられるように準備しておきます。
そうすると、かかりつけ医からの次の指示がスムーズに出やすいです。
(2)近所の産婦人科もしくは内科を受診する
かかりつけ医から他院受診の許可が出た場合は、近所に産婦人科があればそちらを、もし産婦人科で受診できない場合は内科を受診しましょう。
他の産婦人科の場合、産婦人科不足の現状に伴って、かかりつけ患者以外は受け入れてもらえない可能性があります。その場合の選択科が内科なのです。
内科を受診する際には、かかりつけの産婦人科から受けた指示を伝えてスムーズに受診や治療が行えるようにしましょう。
(3)夜間や休日のひどいつわりはどうすればいい?
つわりがひどくて身体が辛くなってしまうのは、何も平日の日中ばかりとは限りません。
何とか頑張って我慢していたものの、どうにも身体が辛くやはり受診したいと思った時が夜間や休日だった場合はどうしたら良いでしょうか。
そんな時はまずかかりつけの産婦人科に電話をしましょう。
もしクリニックなどで夜間や休日は開いていない場合は、普段から時間外の受診はどのようにしたら良いかを医師と相談しておくことも大切です。
というのも、時間外の受け入れを行っている病院は限られるうえ、産婦人科専門医の対応が必要となる妊婦となると受け入れを断られる可能性も出てくるからです。
3.病院ではどんな治療をするの?

つわりが酷くなって病院を受診した際、妊娠悪阻としてそのまま治療に入る場合もあります。
では実際に病院ではどのような治療が行われるのか、通院の場合と入院の場合に分けてご紹介します。
(1)通院で治療する場合
妊娠悪阻として治療に入る場合の目安は、体重の減少(数日で3~5kgまたは減少率5%以上)、尿検査で尿中ケトン体陽性、それ以外でも食事がまったく摂れないなど日常生活に影響が出るくらいの症状がある場合です。
この場合、一時的治療として点滴や内服の処方が行われます。
この場合、点滴はブドウ糖の入ったものを行い、水分や電解質、ビタミンを補給します。
またつわりの症状を軽くする対処として、吐き気止めの内服薬が処方されることもあります。
(2)入院して治療する場合
重症のつわり、つまり妊娠悪阻として入院が必要となる場合の目安は、
- 体重の減少(数日で4~5kgまたは減少率5%以上、特に10%程度になるとかなりの重症扱い)
- 尿中ケトン体要陽性が強い
- 黄疸
- 血圧低下
- 意識がもうろうとしている
- 起き上がれない
- 幻覚・幻聴
などが挙げられます。
この場合は、安静と点滴を主とした治療が行われます。入院の期間は、点滴の効果や症状軽快の程度によって異なるため個々で変わります。
脱水を改善する目的でブドウ糖の入った点滴を行います。この中にはビタミン(B1、B2、C)が入ることが多いです。
一般的な点滴治療は、尿中のケトン体が陰性になるまで続けられます。
4.「ひどいつわり」に関するよくある質問

ここでは、ひどいつわりに関するよくある質問とその回答をご紹介します。
Q.つわりがひどくほとんど食べられないが、赤ちゃんへの栄養は大丈夫?

Q.つわりがひどい時でも食べやすい物、またつわりを軽くしてくれる食べ物はある?

私自身も第1子妊娠中はつわりがひどく、イチゴだけを食べていた時期がありました。
また、つわりを軽くしたいのであれば、ビタミンB類やたんぱく質が含まれた食べ物がお勧めです。
バナナ | 吐き気や倦怠感を軽減させてくれる効果のあるビタミンB6を含む |
ほうれん草 | ビタミンB6を含み貧血の予防にもなる |
ブロッコリー | ビタミンCが豊富でつわり予防に効果があるといわれている |
生姜 | 吐き気の抑制や胃もたれに効果がある |
豚肉 | 疲労回復や精神安定効果のあるビタミンB1と胃のむかつきを抑える効果のあるたんぱく質を含む |
ただし、調理法や味付けなどでつわりの症状も変わってきます。あまり神経質にならず「食べられるものを食べられるタイミングで食べる」ということが一番の方法です。
Q.ひどいつわりを食事以外で軽減する方法はある?

まずは「しっかりと休息をとる」こと。家事や子育て、仕事など行わなければならないことがたくさんあってなかなか休めないかもしれませんが、こんな時こそ家族に協力してもらいましょう。
眠気が襲ってくるときには横になり、短時間でも休むようにしましょう。
締め付けのない服装でゆったりと過ごし、時には足湯などを行って気分転換をすることも大切です。
そして「ストレッチ」をすることです。つわりがひどくて起き上がれないときもあるので無理は禁物ですが、合間で少し体調が良い時は軽いストレッチをすると良いでしょう。
手足や背筋を伸ばすだけでも構いません。つわり中はどうしても運動不足になってしまうので、ストレッチで血行を浴することを心掛けましょう。
最後は「アロマの香りでリラックスする」です。病院でも気分転換の1つとしてアロマオイルが使用するところも増えてきました。
特に妊娠中のつわりに効果があるとされるオイルは、スィートオレンジやグレープフルーツ、レモン、ベルガモットなどの柑橘系です。
柑橘系オイルは胃のむかつき、吐き気などの解消や、嘔吐後の気分のリフレッシュにも効果があります。
アロマオイルは手軽に出来るリラックス方法であるため、是非取り入れてみてください。
Q.ひどいつわりで病院を受診するときに、医師や看護師に何を伝えたら良いでしょうか?

ポイントを絞って話すとその症状の具合や辛さが伝わりやすくなります。ポイントは以下の通りです。
- 1日の嘔吐の回数
- 食事や水分の摂取量
- 食事や水分が摂れていない場合はその日数
- 1日のトイレ回数や尿量、尿の色など
- 体重の減少
- 日常生活にどのように支障が出ているか
医師や看護師には、ただ「辛い、きつい」ということだけでなく、数字を合わせることで伝わりやすく、受診がスムーズになります。
まとめ
つわりは妊娠経過の1つとして、多くの妊婦が経験する症状です。
「つわりだから我慢するしかない」とついつい思ってしまいますが、我慢は禁物です。
その中には妊娠悪阻という病気へと進んでしまっていることもあるのです。
妊娠中の大切な身体です。1人で頑張りすぎて辛い思いをすることなく、家族や周囲の人に協力してもらうことも重要です。
今回お伝えした内容を是非参考にしていただき、「こんなことで受診していいのかな」という迷いを捨てましょう。
自身の状態に不安を感じたらまず医師に相談して、受診のタイミングを逃さずに妊娠悪阻の重症化が避けられれば幸いです。
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しかし、もし食べられない状態が続いても心配は要りません。母親の身体に蓄えられている栄養分が赤ちゃんに届けられるからです。
「食べられる時に食べられるものをできるだけ食べる」ということを心掛けて、あまり神経質にならずに乗り切りましょう。
ただし、まったく食べられない・飲めない上に嘔吐が続く場合は妊娠悪阻の可能性もあるため、我慢せずにすぐに病院を受診してください。