妊娠中の血液検査で分かることとは?調べる内容について

妊娠中 血液検査 分かること

妊娠中の血液検査はなぜ必要なのかと、疑問に思う妊婦さんもいるのではないでしょうか。

実は、順調に妊婦生活を過ごし、元気な赤ちゃんを産むために欠かせない検査なのです。

ここでは、妊娠中の血液検査が必要な理由と、検査で分かることについてご説明します。

この記事を書いた看護師

助産師・看護師jun
Junさん
・大阪府/30代
・正看護師免許
・助産師免許
看護師資格を取得し、その後、助産師資格も取得しました。助産師として働きだし15年以上になり、妊活、子育てで悩むママさんを少しでも看護師・助産師目線でサポートできる記事を執筆していきます。

1.妊娠中の血液検査ってなぜ必要?

疑問に思う妊婦

お母さんの血液は、赤ちゃんに栄養や酸素を送るという大事な役割があります。

そんな血液に、貧血や糖尿病などの病気が潜んでいると、赤ちゃんにも影響を与えてしまいます。

また、お母さんの血液がなんらかの感染症にかかっていた場合、血液を通じて赤ちゃんにも感染してしまう危険がでてきます。

病気や感染症を早期発見して予防する

そこで、事前にお母さんの血液を調べることによって赤ちゃんへの影響を食い止めることができるのです。

お母さんに貧血や糖尿病が見つかれば、妊娠中であっても問題ない薬を使って治療することができます。

お母さんが気づかない間に感染症にかかっていれば、赤ちゃんに移らないように帝王切開にするなどの選択もできます。

一般的な採血をすることで、肝機能や腎機能の悪化など全く予期せぬ病気の前兆が見つかることもあります。

つまり、妊娠中の血液検査はお母さんと赤ちゃんの安全を守るため、早期発見と予防を目的に行うのです。

2.妊娠中の血液検査で分かること

妊婦の血液を検査する看護師

妊娠中の血液検査では、どのようなことが分かるのでしょうか。以下で詳しくご説明します。

(1)血液型検査

通常、自分の血液型を知らない人は少ないはずですが、妊娠初期には、もう一度必ず調べます。

妊娠・出産は、出血のリスクが切っても切り離せません

妊娠初期でも子宮外妊娠のリスクや流産のリスクがあります。妊娠が進むと、前置胎盤などのリスクもでてきます。

さらに、お産のときは弛緩出血などで、1000ml以上の出血がでることも十分考えられるのです。

輸血のために正確な血液型を把握する

輸血

妊娠・出産で出血のリスクに対峙したときに必要なのが輸血です。輸血が必要な状況は、お母さんの一刻を争う事態が考えられます。

そんなときに備え、正解なABO式血液型、Rh式+−をあらかじめ把握しておく必要があるのです。

また、RH陰性の妊婦さんから生まれたRH陽性の赤ちゃんには、免疫グロブリンを注射し、アレルギー反応をおこさないよう予防します。

(2)不規則抗体検査

A型の人にB型の血液を輸血すると、赤血球が破壊され輸血はうまくいきません。

しかし、過去の輸血により、なかには同じ血液型を輸血しても赤血球を破壊してしまう抗体を持つ人がいます。

それが「不規則抗体+」の状態です。

血液型、RH式の正確な情報だけでは不十分です。いざ、輸血の必要性に迫られたとき、不規則抗体の検査結果は重要になります。

(3)貧血検査

貧血の女性

妊娠中のヘモグロビン濃度を調べ、貧血ではないかを検査します。

妊娠すると、お産に備え身体を流れる血液量が増えていきます。しかし、固体成分(白血球や赤血球など)を増やすことはできません。

つまり、薄い血液が増えることになります。

看護師からのポイント

看護師ポイント

妊娠中に貧血傾向にあれば、鉄剤を注射したり、飲んだりして改善に努めます。もちろん、食事を工夫することも大切です。

(4)血糖値検査

妊娠初期から高血糖であれば、奇形発生リスクが高まったり巨大児になったりし、お産への影響もでてきます。

妊娠初期に血糖値検査で数値が高い場合、さらに詳しく調べます。「ブドウ糖負荷試験」により妊娠糖尿病を診断し、早期治療に努めます。

妊娠中は高血糖となりやすい

血糖値とは、カラダの中にあるブドウ糖の値のことです。

妊娠すると、ブドウ糖をエネルギーに変えるインスリンが作用しにくくなります。これは、胎盤性ホルモン分泌の影響があると考えられています。

インスリンが効きにくい状況で、赤ちゃんが必要とする以上に過剰な糖分を摂ると、高血糖となってしまいます。

(5)HBs抗原検査

HBs抗原検査とは、B型肝炎ウイルスに感染していないか調べる検査です。

「HBs抗原」が陰性であれば感染の心配はいりません。陽性がでた場合には、さらに詳しく「HBe抗原」検査を行います。

「HBe抗原」陽性の場合には赤ちゃんへの感染リスクが非常に高くなり、陰性の場合には赤ちゃんへの感染リスクは下がります。

いずれにせよ「HBs抗原」が陽性の場合には、母子感染の予防が必要になります。B型肝炎ウイルスに対する免疫グロブリンを、出生時より複数回に分け投与します。

B型肝炎ウイルスの感染源は?

B型肝炎ウイルスの感染源は、ほとんどがお産のときの母子感染です。

そのため、妊婦健診で初めて感染を知るということも珍しくありません。

また、最近問題視されているのは、精液や膣分泌液などからの性行為感染です。

看護師からのポイント

看護師ポイント

「HBs抗原」が陽性であった場合でも、経膣分娩も、母乳をあげることもできます。周りの人に感染しないよう、血液の取り扱いには十分注意が必要です。

将来的に、お母さんにはB型肝炎発症リスクがあるため、継続的な内科受診が必要です。

(6)HCV抗体検査

HCV抗体検査とは、C型肝炎ウイルスに感染していないか調べる検査です。

「HCV抗体」が陰性であれば感染の心配はいりません。陽性の場合には、さらに詳しく「HCV-RNA定量検査」、肝機能検査を行います。

「HCV-RNA定量検査」が陽性の場合には、赤ちゃんへの感染のリスクがあります。陰性の場合は、現在ウイルスは身体に存在していないため赤ちゃんへの感染の心配はいりません。

感染率が低く、赤ちゃんの感染は完治が期待できる

感染源の多くは、お産の時の母子感染です。しかし、B型肝炎のようなワクチンはなく、母子感染の予防はできません。

感染率でみると、B型肝炎が約80%と高率なのに対し、C型肝炎は約15%と低くなっています。

赤ちゃんに感染した場合も、3歳までに自然治癒する、インターフェロン療法による完治が期待できます。

お母さんは、治療せず放置すると将来的に慢性肝炎から肝硬変、肝臓ガンなどの発症リスクが非常に高いため、出産後の継続的な治療が必要です。

(7)風疹抗体検査

風疹の赤ちゃん

妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんが視覚障害、先天性心疾患、聴覚障害などの症状がある「先天性風疹症候群」になるリスクが高くなります。

妊婦さん自身が小さい頃にかかったり予防注射をしたりしていると、抗体を持っていると推測されます。しかし、絶対ではありません

そのため、妊娠初期に風疹ウイルスの抗体を持っているか検査をします。

抗体の有無の判断基準とは

「抗体価」の値によって、抗体の有無や感染の有無を判断します。抗体価の結果(HI法)は、8の倍数で表し、判断基準は以下の通りです。

  • 「抗体価8倍未満」:抗体がない、つまり感染のリスクがあると判断
  • 「抗体価8倍、16倍」:少しの抗体はあるが十分ではないと判断
  • 「抗体価32倍〜126倍」:適度な抗体がある、つまり感染のリスクはないと判断
  • 「抗体価256倍以上」:最近風疹に感染したかもしれない、と判断

「抗体価256倍以上」の場合、さらに詳しく「IgM抗体」を調べ、感染状況を把握します。赤ちゃんへの感染が強い場合、胎児診断を受け、慎重な判断が必要になります。

抗体がない、あるいは十分でない場合

抗体がない、あるいは十分でない場合、感染率の高い妊娠16週までは、

  • 人ごみを避ける
  • 外出後の手洗い、うがいを徹底する
  • (旦那さんに抗体がない場合)ワクチン注射で家庭内での感染を予防する

以上のことを心がける必要があります。妊婦さん自身も出産後早めのワクチン注射が推奨されます。

(8)梅毒血清反応検査

梅毒血清反応検査とは、梅毒の原因となる「TPHA」に感染していないか調べる検査です。

陰性の場合感染の心配はいりません。陽性の場合は、流産、早産を引き起こしたり、赤ちゃんに先天梅毒への感染リスクがでてきたりします。

何より、早期に治療を開始することが大切です。感染源のほとんどは、性行為感染です。

(9)トキソプラズマ抗体検査

トキソプラズマ抗体検査の「トキソプラズマ」とは、動物(特にネコ)や鳥の体内、土の中にいる寄生虫の一種です。

陰性の場合検査時点で感染していませんが、妊娠中に感染するリスクはあります。感染源となる、ネコの世話やガーデニングなどは十分な注意が必要です。

陽性の場合はすでに感染しています。この場合、妊娠前の感染か、妊娠後の感染か詳しく調べます。

「先天性トキソプラズマ症」発症に影響するのは、妊娠後の感染です。

(10)HIV抗体検査

HIV抗体検査とは、エイズの原因となるHIV抗体に感染していないか調べる検査です。

「HIV抗体」が陰性であれば感染の心配はいりません。感染源は性行為感染がほとんどです。

陽性の場合は再度検査します。一次検査で陽性の妊婦のうち約95%は偽陽性、つまり感染していません。陽性とでても慌てず、精密検査を受けることが大切です。

看護師からのポイント

看護師ポイント

エイズに感染していても、発症していなければ無症状です。未治療で長期間過ごしていることもあるのです。

妊娠中でも、感染が分かった時点で治療を開始し、母子感染の予防に努めます。

(11)HTLV–I検査

HTLV–I検査とは、成人T細胞白血病の原因ウイルスとなるHTLV–I抗体への感染がないかを調べる検査です。

「HTLV–I抗体」が陰性であれば感染の心配はありません。一次検査で陽性の場合は、さらに詳しく調べます。

感染源のほとんどは母親の母乳からの感染です。陽性であった場合、母乳をあげずミルク育児にすることで、赤ちゃんへの感染を防ぐことができます。

まとめ

笑顔の看護師

妊娠中の血液検査は、順調に妊婦生活を過ごし、元気な赤ちゃんを産むために欠かせない検査です。

まずは、採血だと聞いて不安になる前に、医師や私たち医療者に相談して下さい。

検査結果に疑問や不安がある場合も、同様です。医師に相談することで、何でもなかったということもよくあります。大切なのは、血液検査をきちんと受け、自分の身体を知ることです。


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